
木之本に心強い仲間
元地域おこし協力隊員の植田淳平さんは2015年12月、「芸術文化による地域活性化」を任務として東京から長浜に移住。3年の任期中に、北国街道でのブックカフェのオープンや、西野亮廣さんの絵本「えんとつ町のプペル」展の開催など、ネット上で資金を募るクラウドファンディングの活用をサポートし、成功を収めました。 昨年、「映画館のない木之本で『カメラを止めるな』の上映会がしたい」と企画したプロジェクトは、地方に特化したクラウドファンディングサイト「FAAVO」の中で特に成果が認められたとして表彰されました。植田さんは「クラウドファンディングは資金を集めるだけでなく、活動を周知したり、末長く応援してくれる味方を作れたりするところが強み」と言います。 昨年末、協力隊の任期を終えた後も「都会ではなく地方だからこそ自分の力を求めてくれる人がいる。一個人として生きているという実感が強く持てる」と木之本に残ることを決めました。今後は、合同会社「MediArt」として、クラウドファンディングをしたい人や団体を支援する事業を考えているそう。「地方には、掘り起こしがいのある資

母の面影 大音の観音様
賎ヶ岳の麓、伊香具小学校の裏手に、ひっそりと佇むお堂があります。伊香三十三所観音霊場十七番、明音寺千手堂です。山の斜面にある苔むした石段を登り、靴を脱いでお堂に入ると、6畳ほどのお部屋の中に観音様がいらっしゃいます。 普段お堂は閉まっていて、集落で「観音講」を結ぶ7軒の御宅がお堂の鍵を管理し、時折訪ねてくる拝観者の方のお相手をされています。 私が中に入らせていただくのはこの日が初めて。仏像が好きすぎて長浜に移住した「観音ガール」の對馬佳菜子ちゃんが遊びに来てくれたので、世話方さんにお願いし、拝ませていただくことにしました。 初めて出会う大音の観音様。どっしりと構えた黒塗りのお体に、紅色の唇。頭には十一のお顔をお持ちです。正面に座り、しばらくじっと見つめていると、「可愛い顔してはるやろ」と世話方の林忠雄さん。 観音さまのお顔に「しっかりしなさい!」と、私にげきを飛ばす実家の母の顔を重ねていた私はそう打ち明けると、林さんは「見たときの気持ちでお顔が変わる。わしも若い時分、腹を立てているときにお顔を見たら、すごく怒った顔をしてはったんや。あんたは今そう

伊吹の自然 切り絵で表現
米原市の切り絵作家早川鉄平さんの展示会に行ってきました。 地面に鼻を擦り付けて餌を探す猪、周囲を警戒して耳をすませるうさぎ、その頭上を、今まさに獲物を狙って降下するイヌワシ。間接照明の灯りに、浮かび上がる生き生きとした動物たちの姿。会場を歩くと、どこかおとぎ話の世界に迷い込んだようです。 早川さんは金沢市出身の元カメラマン。モンゴルや北海道、小笠原諸島など国内外で主に野生動物を題材に写真を撮ってきました。豊かな自然に感動する一方で、「良い時期に良いところだけを見て、全てを見てきたように発表することに後ろめたさがあった」と言います。「自然の中に根を下ろし、内側から暮らしを見つめて表現したい」と仕事で縁があった米原市に地域おこし協力隊として移住。 その間に、子どもの頃からの趣味だった切り絵が注目を受け、カメラをカッターに持ち替えました。「アウトプットの仕方だけが違うだけ。今表現したいものを表現しやすいのが切り絵だった」と、構えない姿勢に心が和みます。 現在の住まいの伊吹は猪や鹿やキツネに日常的に出会える絶好の場所。厳しい環境で必死に生きているという印

謹賀新年 餅つき三昧
あけましておめでとうございます。皆さんよいお年をお迎えされましたか。我が家の年末年始は餅つき三昧。年の瀬は自分たちで育てた羽二重をついて鏡餅をつくり、年明けは、私たちのお米の師匠で西浅井町塩津浜の樋口嘉明さんと古代米で餅つきをしました。 古代米とは、農学的な概念は無いそうですが一般的には「古代から栽培されてきた在来品種」とされています。樋口さんはコシヒカリ以外に、赤米、緑米、黒米、香米など7種類の古代米を栽培。色とりどりの稲穂が実る秋の田んぼは美しく、なかなか他では見かけない風景です。 今回は、そのうち香米と赤米のもち米を準備してくれました。近くに越してきたアメリカ人親子のダニエルさんとハナちゃんも誘って、いざ餅つき。 まず、樋口さんが飛び散らないように杵で米粒を潰してから、みんなで交代で杵を振り下ろして餅をつきます。つきあがった餅は、急いで丸めて重箱へ。 初めて餅つきをするハナちゃんは、自分で振り上げた杵に頭をぶつけて泣いちゃったり、ついたお餅を丸めるのに苦戦して、指と指の間に水かきができたみたいに餅がへばりついちゃったり。 それでも、つきたて