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母の面影 大音の観音様


 賎ヶ岳の麓、伊香具小学校の裏手に、ひっそりと佇むお堂があります。伊香三十三所観音霊場十七番、明音寺千手堂です。山の斜面にある苔むした石段を登り、靴を脱いでお堂に入ると、6畳ほどのお部屋の中に観音様がいらっしゃいます。

 普段お堂は閉まっていて、集落で「観音講」を結ぶ7軒の御宅がお堂の鍵を管理し、時折訪ねてくる拝観者の方のお相手をされています。

 私が中に入らせていただくのはこの日が初めて。仏像が好きすぎて長浜に移住した「観音ガール」の對馬佳菜子ちゃんが遊びに来てくれたので、世話方さんにお願いし、拝ませていただくことにしました。

 初めて出会う大音の観音様。どっしりと構えた黒塗りのお体に、紅色の唇。頭には十一のお顔をお持ちです。正面に座り、しばらくじっと見つめていると、「可愛い顔してはるやろ」と世話方の林忠雄さん。

 観音さまのお顔に「しっかりしなさい!」と、私にげきを飛ばす実家の母の顔を重ねていた私はそう打ち明けると、林さんは「見たときの気持ちでお顔が変わる。わしも若い時分、腹を立てているときにお顔を見たら、すごく怒った顔をしてはったんや。あんたは今そういう気持ちなんやね」と笑いました。

 お堂を出ると、観音様の目線には伊香具小の校舎と校庭が。村の子どもたちを見守ってくれているのだなあと、やはり温かい母の面影を重ねました。

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