おばちゃんとおじちゃんの珈琲豆店
喫茶店の要の珈琲。私たちは、近江八幡の自家焙煎豆店「MJQ」から仕入れています。
駅から琵琶湖側に歩いてすぐ、住宅の一階を改装した店内は、小さなカウンターと二人がけのテーブルが置いてあるこじんまりとした造り。元高校教師のおじさんが、横浜まで焙煎技術を習いに行くなど修行を積んで、退職後に夫婦で始めたお店です。
メニューは、コロンビアやブラジルなど世界各地の豆が13種類、独自のブレンドが9種類。アイスコーヒー用やエスプレッソ用など、焙煎の深さを変えた豆も置いています。新蕎麦の季節には、珈琲豆店なのに打ちたての蕎麦のお持ち帰りもできるように。この蕎麦も絶品。凝り性で多趣味なおじさんは蕎麦打ちも名人級です。
初めてお店を訪ねたとき、カウンターのおばちゃんにオススメを聞くと「オススメって言われてもねえ」と素っ気ない返事。仕方なく適当に頼んで淹れてもらった一杯が大変美味しくて、それまで関心のなかった森下君が一気に珈琲党になりました。
何度か通ううちに、おばちゃんは飾らないやりとりがとても気持ちの良い博識な人だと知りました。本が好きな私の話にも、映画や音楽が好きな森下くんの話にも上手に付き合ってくれます。
おじさんが言うには、裏表のない人柄を慕うおばちゃんのファンも多いとか。かくいう私たちも、お店の珈琲とこの老夫婦が大好きなのです。
(2018年10月・朝日新聞滋賀版)